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自意識をひっぱたきたい

自分は異様に空気が読める人間だと思っていたけど、読んでいたのは過剰な自意識でした。

本の紹介①

上山和樹さんの

 

「ひきこもり」だった僕から

 

という本の紹介をします。

 

著者の上山和樹さんについてWikipedia上山和樹 - Wikipedia)も参考にしてください。

 

上山さんは、自分が中学・高校・大学で不登校やひきこもりを経験し、今ではひきこもりの元当事者として、執筆活動や講演などを行っている方です。

 

この本は、前半部分の題名が「これまで(自分へ)」となっており、後半部分の題名が「いま(いまから)」となっています。

 

「これまで(自分へ)」では、上山さんが執筆活動や講演を行うまでの道のりが、幼少時代の思い出から遡って描かれています。

 

前半部分の「これまで(自分へ)」を読むと、自分について考えることができます。

 

こんなこと悩んでいるのは自分だけかな、って思っていたことが上山さんの悩みとして描かれていたり、

 

なんとなく周囲の人間と自分とズレを感じてモワモワしてた部分が、上山さんによって表現されている部分がいくつかありました。

 

(上山さんの言葉から、自分について考えた記事です。)

現実をぶっ壊したい衝動 - ファッションひきこもりによる自分研究

社会問題を語れるやつは幸せ者だ - ファッションひきこもりによる自分研究

 

こんなこと悩んでいるのは自分だけかな、と思っていたことが、他の人も悩んでいたとわかって少し安心できました。

 

特に「これまで(自分へ)」の中で読んでいて希望が湧いてきたのは、上山さんがひきこもり元当事者として活動をしていこうと思い動き出したシーンです。

 

ひきこもりの親の会の前で、初めて講演をし、評判だった時について、こんな風に書かれています。

 

すぐにではないが、よくわからない地殻変動が起こりはじめた。よくわからない、というが、一番根深いところで、自分が一番無視したくないはずのものと、自分を一番拒絶していたはずの「社会」みたいなものとが、接点をつくりはじめた。

 自分の一番どうしようもないはずのもの、それゆえに自分の人生のすべてを棒に振らねばならなくなるほど僕を現実逃避に導いたはずの隠れた情念が、明るい昼の世界に「求められて」いる……信じがたいが、実際に起こったことだった。そのへんで、僕は考えなければならない、これは絶対に無視してはいけない体験だ、という腹の据わった感覚を持った。

 

そして、このような感覚を持った上山さんが、これから、ひきこもりに対して厳しい「社会」とどう対峙していくかが後半部分の「いま(いまから)」に描かれています。

 

 

僕は、何か自分の葛藤が解決する救いを求めて、この本を手に取りました。

 

本も出して、講演もして、バリバリ活動しているひきこもり元当事者の方の言うことの中に、きっと葛藤を解消するための救いがあるだろうと。

 

でも、この本を読んだからといって、自分の葛藤が解消するわけではありませんでした。

 

エピローグにこんなことが書かれています

 

『生きていくつらさは、正直、いまも激しく続いている。底の知れない、まっ暗な深淵に飛び降りるような、まったく寄辺のない感覚の毎日。子供のころからずっと苦しんできた、「なんだかよくわからない、得体の知れない」世界への感覚は、いまも続いている。この世に、寄辺なんてない。』

 

本を手に取る前の僕は、なにやら勘違いをしていたようです。

 

執筆活動やら講演やらをしてバリバリ働いている元当事者の人が、ひきこもってた時の葛藤を解消できたわけではないのです。

 

むしろ、僕のこの勘違いこそが、自分を追い詰めている一つの原因だったのでは、と思うようになりました。

 

半ばひきこもりのような状態から脱出したい。

 

そう考えている時、いつも僕は“葛藤の無くなる状態”をゴールに見据えていたように思います。

 

上山さんも本の中で、ひきこもりの根本にあるのは「価値観の葛藤」だと言っています。

 

この「価値観の葛藤」を解消するのではなく、それを引き受けた上で生きていくこと。

 

そんなイメージをこの本は持たせてくれたように思います。

 

 

自分の「価値観の葛藤」を上山さんの言葉の中から見つめ直し、共有できたこと。

 

「価値観の葛藤」を抱えたまま<社会>と繋がった上山さんの経験を、当事者ならではの力の籠った生き生きとした言葉と共に追体験できたこと。

 

そして、今でも「価値観の葛藤」を抱えながら、自分の生きていく場所を創出しようとしている上山さんの存在を知れたこと。

 

こういったことを通して、「価値観の葛藤」を引き受けて生きていくというイメージを持つことができたように思います。

 

 

少しだけ、自分の将来への視野を広げてくれる本でした。

 

 

 

「ひきこもり」だった僕から

「ひきこもり」だった僕から